バナーでもLPでもHPでも、制作を外注するときに必ず確認されるのは「いくらか」と「いつまでか」です。当然だと思います。
ただ、実際にこじれるのはそこではありません。修正の回数と、確認の期限です。ここが決まっていない仕事は、金額と納期がどれだけ明確でも、終盤で必ず苦しくなります。
私は受注する側ですが、この記事は発注する側の立場で書きます。理由は単純で、ここが曖昧なままだと発注側にとっても損だからです。
なぜ「修正無制限」は発注側にとっても損なのか
「修正無制限」「ご納得いくまで対応します」という条件は、一見すると発注側に有利に見えます。実際には、次の3つが起きます。
ひとつめは、単価に不確実性が乗ることです。受注側は、修正が何回来るか分からない仕事の見積りを、平均ではなく最悪ケースに寄せて出します。無制限という条件は、その最悪ケースぶんを毎回先払いしているのと変わりません。
ふたつめは、判断が先送りされることです。「あとで直せる」と分かっていると、社内で意見を集める段階が甘くなります。結果、5回目の修正で初めて役員の意見が出てきて、構成からやり直しになる。これは受注側の負担というより、発注側の時間の損失です。
みっつめは、最後の1回の品質が落ちることです。回数の上限がないと、受注側は1回あたりに込める密度を下げます。「どうせまた来るから」と考えるのが自然だからです。回数が決まっていると、1回に持てるものを全部持ってきます。
決めておくと穏やかに終わる、4つの項目
私が契約書に必ず入れているのは、次の4つです。発注側から提示しても、まっとうな相手なら嫌がりません。むしろ話が早くなります。
1. 修正の回数
**「1つの制作物につき2回まで」**が、私の標準です。制作物ごとに数える、という点が大事です。「案件につき2回」だと、バナー10本の案件で何が2回なのか分からなくなります。
2回という数字には理由があります。1回目は「方向性の確認」、2回目は「細部の詰め」。この2段階で収まらない修正は、たいてい修正ではなく要件の変更です。そこは追加費用の話として、正面から相談したほうがお互いに健全です。
2. 「1回」の定義
ここが抜けると意味がありません。同じタイミングでまとめていただいたご指摘を、1回と数えます。
避けたいのは、月曜に3点、火曜に2点、水曜に1点と分けて届くパターンです。作業としては3回ぶんですが、発注側の感覚では「1回の修正」です。この認識の差が、後半の空気を悪くします。
対策は簡単で、指摘は1通のメールにまとめて送るという運用を先に決めておくだけです。社内の関係者に一度回してから出す、という手順が自然に生まれます。
3. 確認の期限と「みなし承認」
**「ご確認は5営業日以内。期限を過ぎた場合は承認されたものとみなします」**という条項を入れています。
冷たく見えるかもしれませんが、これは受注側の保険というより、案件が宙に浮くのを防ぐための仕組みです。確認が2週間止まると、受注側は次の案件を入れます。そこから修正依頼が来ても、すぐには戻せません。結果として納期が後ろにずれ、その理由が誰にも説明できない状態になります。
なお、期限が来る前にこちらから1回リマインドを入れる、という運用もセットにしています。忘れていただけのことを承認扱いにするのは、フェアではないからです。
4. 素材の支給期限
意外と見落とされるのがこれです。ロゴ、写真、商品情報、実績数値。支給がいつ揃うかで、着手日は動きます。
「素材のご支給から◯営業日」という書き方にしておくと、支給が遅れたときに納期をどうするかの会話が、感情の問題になりません。
発注前に、この5つを聞いておくといい
見積書をもらう前でも聞ける質問です。答え方に、その相手の仕事の設計がだいたい出ます。
- 修正は何回までですか。「1回」はどう数えますか
- こちらの確認が遅れた場合、納期はどう扱いますか
- 素材の支給はいつまでに何が必要ですか
- 途中で方向性を変えたい場合、どこから追加費用になりますか
- 納品後、修正が必要になったらどう対応されますか
**「うちは無制限なので大丈夫です」という即答は、実は要注意です。**上に書いた3つの損が、そのまま乗ってきます。回数を答えたうえで、超えた場合の扱いまで説明できる相手のほうが、結果的に穏やかに終わります。
それでも回数を超えたときは
超えること自体は、失敗ではありません。市場が動いた、社内の方針が変わった、実際に配信してみたら想定と違った。正当な理由はいくらでもあります。
問題は、超えたことに誰も触れないまま進むことです。そのまま行くと、受注側は無償で削られ、発注側は「なんとなく空気が悪い」と感じる。どちらにも良いことがありません。
3回目の依頼が来た時点で、「ここからは要件の変更として扱わせてください」と一度言葉にする。それだけで、関係は最後まで保ちます。
まとめ
- 揉めるのは金額と納期ではなく、修正の回数と確認の期限
- 「修正無制限」は、単価・判断の速度・1回あたりの品質の3つを損なう
- 決めるのは4つ。回数/「1回」の定義/確認期限とみなし承認/素材の支給期限
- 発注前に5つ聞けば、相手の仕事の設計が見える
契約書の文言そのものより、発注前に一度この話をしたかどうかで、案件の終わり方は変わります。制作物の出来より先に、そこを揃えておくほうが得です。
この記事は、私が実際に契約書へ入れている条項をもとに書いています。同じ内容を、発注する側から見たらどう読めるかという形にまとめました。ご相談はこちらから。